迷参謀アルマジロの日々是修行日記
「判例」(1)
  皆さんも、 「判例」という言葉を聞いたことがあるかと思います。そして、アルマジロが相談を受けた時によくある質問のひとつに、「この件に関して判例はあるのでしょうか」というものがあります。ところで、「判例」とは一体どのようなものなのでしょうか。

  この問に対して一言で答えるのは、専門家にとってもそう簡単ではないと思います。というのも、「判例」という言葉は、多義的に、つまり、いろいろな意味で用いられているからです。敢えて定義付けるとすれば、「判例とは、特定の裁判において裁判所によって示された判断であって、それは裁判の理由中に示された法律的判断である」ということができます。そして、その「法律的判断」は、別の事件を裁判するときに先例となりうるような一般性をもった判断でなくてはならないとされています。

  正直言って、何を言っているのか理解に苦しむと思います。誤解を覚悟で端的に言えば、判決の理由の中で、「XXXについては、YYYという理由(法の趣旨や実質的理由など)で、特別(特段)の事情がない限り、ZZZと考えるべきである」といった、当該裁判で問題となっているテーマ(XXX)を考えるにあたっての「判断」、つまり、「規範」が示されます。この「規範」に具体的事実を当てはめて結論を出すのですが(法的三段論法)、この「規範」の部分を「判例」と呼ぶことができると思います。(その他にも、判決理由中のどの部分が「判例」で、どの部分が「傍論」かなどというややこしい議論もありますが、ここでは割愛します!)

  また、上述の「判例」の定義からすれば、最高裁判所の判断だけでなく、地方裁判所や高等裁判所の判断であっても裁判所の判断である限り「判例」と呼べることになります。もっとも、同じ「判例」であっても、実務に対する影響力というか、先例としての力は最高裁判所の判例のみが持っていますから、通常、最高裁判所の判断を「判例」と呼ぶことが多いと思います。

  ・・・と、ここまで「判例」を定義してきましたが、重要なのは、 「判例」とは、裁判所の判断における「規範」部分なのであって、この「規範」に当該事件における具体的事実を当てはめて得た「結論」の部分ではない、ということです。よく似た事件であっても具体的事実がすべて同じということはあり得ませんから、同じ「規範」にあてはめても、異なる結論に至ることも不思議ではありません。そこで、「判例はあるのでしょうか」という問に対しては、たとえば、「XXXに関する判例はありますが、具体的事実を当てはめてみないと結論はわかりません」というお返事を差し上げることになります。

  蛇足ながら、実際の裁判における具体的事実とは、証拠及び弁論の全趣旨により裁判所が認定した事実となりますから、たとえば証拠による証明に失敗すれば、その事実(らしきもの?)は無かったものとなります(この部分は、弁護士先生のお仕事です)。そこで、紛争になったときに備えて、裁判所に事実を認定してもらうに足りる内容の契約書等の書面を用意しておくことは必要なのです・・・これも「予防法務」の内容のひとつです!
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by hayakawa-houmu | 2009-08-26 06:48 | 予防・戦略法務のこと
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